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★ 小説家を見つけたら(原題:
Finding Forrester
   監 督 :ガス・ヴァン・サント(他の作品:グッドウィル・ハンティング、…)
   出 演 :ショーン・コネリー、ロブ・ブラウン、マット・ディモン
   ジャンル:ドラマ
   2000年  アメリカ



 ショーン・コネリーの引退間近の作品。
 これ以後は映像としては1作しか出演していないようです。
 みんな仲良く幸せになりましたというタイプの「ハッピーエンド」ではないけれど、これも一種のハッピーエンドであって、見終わってからじっくりと感動が味わえる名作です。

注)以下、ネタバレだらけです!

【あらすじ】

 ブロンクスのハイスクールに通う黒人の少年ジャマール(ロブ・ブラウン)は悪友たちとの行きがかりで、ある夜に近所で噂の変人の部屋に忍び込みます。
 ところが変人は起きていて … これが、ジャマールとフォレスター = 変人=天才小説家(ショーン・コネリー)の出会いでした。
 16歳の少年と老作家は、互いにさまざまな駆け引きをしながらも徐々に打ち解けていきます。(二人の示唆に富んだ会話はとても見応えがあります。)
 元々本が好きで文才のあったジャマールはフォレスターの指導で才能を磨いていく一方で、世捨て人となっていたフォレスターをドアの外へと導いていき、彼の心の中に沈澱していた暗い思いを開放していくのです。
 しかし、ジャマールのあまりの才能とその急激な進歩に疑いを抱いた一人の教授が … !


【感想】 
 ショーン・コネリー、渋くて存在感があって、いいです!(私はファンです!)
 偶然に出会った若者と老人の人生がしばらくの間絡み合い、友情を育み、そしてやがて別れが来る … なんかこう書いただけで思い出し感動して涙腺が緩みそうです!
 
 フォレスターはデビュー作でピュリツァー賞を受賞し、なぜかそのまま表舞台から消えてしまった謎の天才作家です。
 妙な縁で知り合ったジャマールには、自分のことは一切人に漏らさないとの条件で作文の指導をします。
 それがジャマールを予想外の窮地に陥れてしまい、やっと将来に希望が見えかけていたのにまた元のダンンタウンへ叩き落とされそうになりますが、彼は約束を守りフォレスターの存在を口にはしません。
 それを知ったフォレスターは、数十年間決して人前に出なかったのに、若い大切な友人・ジャマールを助けるために行動を起こすのです。
 かれもまた、居心地のいい自分の立場を投げ捨てる程の友情を、若い友人と共有していたのですね!
 友、そして人生というものの大切さと儚さを改めて感じ、考えてしまいます。




ジャマールを救ったあと、フォレスターは旅に出ると言って別れる。
シャンと背筋を伸ばして自転車で遠ざかるフォレスター。

これが彼の最後の姿となる … 。


 下町の黒人の少年と老いた白人天才小説家、という思いっきり違和感のある組み合わせですが、だからこそ、その深い友情が感動を呼ぶのかもしれません。
 (なんだか現実にも似たようなシチュエーションの作家がいたような … 現実は別にドラマチックではなかったかな?)

 若者にとってはまだ長い人生があり、他とのかかわりもずっと続くもののように思っていますが、老人は素晴らしい事もやがて終わりを迎えるべき事柄の一つでしかない事をどこかで意識しているのです。
 人は時として夢が叶う事を恐れる、なんてセリフもあったな 〜 。
 老作家の二つ目の作品、そして遺作となった作品名は「sunset」でした。
 そして遺言で彼の全てをジャマールに譲って逝ったのでした。
 彼の人生は最後に幸せなものになった、 と思います。


 私は、歳のせいかフォレスターの視線でこの映画を鑑賞していたかもしれません …。




 ジャマールが転校した学校の理事長の娘、聡明でクールな同級生でジャマールのよき理解者役にアンナ・パキン、最後にワンシーンちょこっとだけ登場する弁護士は、なんとマット・ディモンです。
 登場人物中、悪役はジャマールに疑いを抱く学校の教授と、同級生でバスケットのライバルの生徒、この二人くらいしかいません。

 エンドロール(短めなので最後まで観てね!)の背景に流れるシーンは、たぶん人生というものの一面を表現しているのでしょう、バックの音楽もウクレレとボーカルだけのシンプルなもので、見ている者の余韻に浸っている思考の邪魔をしない、最高です!
 英語が苦手な私にとってありがたいことに歌詞の字幕も出るのですが、つい背景の方をを眺めてしまうのでなかなか読めない!

 また、映画製作スタッフに音楽好き(楽器好き?)の人がいたのか、パーティーで演奏しているバンドの中に珍しい「コルネットバイオリン」がいます。
 (そのものを初めて見たので調べてみたのです。音量が必要だった昔の録音用って書いてあったけど独特の音色になるそうなので、敢えて演奏に使うのもありですね! ただし、重いんだそうです。)


  関連作品:風とライオン    … ショーン・コネリー 出演
       エントラップメント … ショーン・コネリー 出演



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